長崎西彼農業協同組合 様
公開コンテンツ(マニュアル・Q&A等)を利用してのセルフ導入
長崎西彼農業協同組合様(以下JA長崎せいひ様)は、長崎市を始めとする県西南部を事業区域とし、地域農業に貢献されています。域内の海と山に囲まれた温暖で豊かな特性を活かし、温州ミカン(生産量県内1位)、ビワ(生産量全国1位)、肉牛等を生産し、高い評価を得ておられます。
JA長崎せいひ様では、農業を営む組合員様(約3万人)の生活を支えるために、農業関連事業のみならず、スーパー、金融、葬祭などの生活に密着した多種多様な事業を運営されております。この多様な事業形態に対応する経営管理システム基盤として、fusion_place cloudをご活用いただいております。
ご担当者様がたったおひとりで始められたシステム開発から、事業所展開トライアルのストーリー、そして今後の目標までをお伺いしました。
お話しを伺った方
【ポイント】
・JAならではの多種多様な業種特性に対応(農業・金融・小売り等)
・公開コンテンツ(マニュアル・Q&A等)を利用してのセルフ導入
・財務部門の業務効率化から現場に役立つ管理へ。さらなる経営管理最適化を目指す
インタビュー
━ 貴組合の事業内容・特長についてお聞かせください。
鶴田様 JA(農業組合)は、農業者により組織された法律上の組合で、第一義の目的は、農業者所得を増大することです。本組合では、13種類以上の事業を営んでいます。その事業内容は多岐に渡っており、農業振興、農産物販売、肥料農薬等の購買店舗運営、ガソリンスタンド、スーパー、農機具販売、プロパンガス販売、葬祭事業、銀行業、共済事業などがあります。農業者の所得増大という視点から、IT化も推進しているところです。
━ 導入の背景についてお聞かせください。
鶴田様 当時の組合長より、「職員の経営意識を醸成したい」という要請を受けて、漠然と「そのためには活動と業績評価をつなげ、それを可視化するインフラ構築が必要ではないか」と考えたのがはじまりです。
当時、インフラとなり得るツールの知識もなく、どのように進めればよいかわからなかったので、弊組合を含む長崎の7つのJAをサポートしているJA長崎中央会に相談したところ、同一県内の他のJAさんが利用していたfusion_placeを紹介されました。
そこで、フュージョンズ社のHPを閲覧したのですが、私の考えていた課題やニーズが記載されており、特に、③と④については、まさに、これだと思い、導入を決めました。
マネジメント層のニーズに応える管理会計 (弊社HPより抜粋)
① 予算の集計に時間が掛かりすぎ。施策検討にもっと時間を割きたいのに・・・
② 期末着地が直前までわからない。経費を絞るべきなのか、使うべきなの・・・
③ 経理の報告するP/Lと事業の実感がどうも結びつかない・・・
④ 全社員に売上や費用を意識させるにはどうすれば・・・
━ 導入前はどのような課題がありましたか。
鶴田様 fusion_place導入前は、基幹システムから出力したデータを、Excelに貼り付け、数式を駆使して実績データを集計していました。月次では各事業部で支店ごとの取引高(例:肥料売上高)のみ管理し、年1回で支店・事業ごとのPLを作成していました。精密な数値作成はできていたのですが、貼り付けるデータ量が多く、更に数式やリンク等を利用して集計していたので、ファイルサイズが大きくなり、開くだけでも時間がかかっていました。また、データ加工や分析も難しく、例えば管理可能費と管理不能費の区別や、投資効果の分析はできませんでした。
予算については、年に1回、組合全体として作成するのみで、支店・事業ごとの予算作成や、予実比較は各事業部で行い、統一した管理は実施していませんでした。
━ プロジェクトのスコープと体制をお聞かせください。鶴田様がおひとりで始められたと伺ってます。
鶴田様 最初は、自分自身の会計知識、業務理解、fusion_placeの知識、いずれにも自信がありませんでしたので、組合内で、多額の初期投資を提案する勇気がありませんでした。当時の組合内のムードとしても、まだ予算化は難しかったと思います。
そこで、まずは自分の担当業務である「実績損益表の作成」に対象を絞り、fusion_placeのデータベースを自分で構築することにしました。業務の合間に時間をみつけては、トライ&エラーを繰り返しながら、基幹システムから出力した実績データの取り込みから、配賦などの各種処理、損益表の出力までを実現することができました。
当業務の課題が解決し、これで自信もついたので、予算業務にも拡張することにしました。全店舗・全事業部を巻き込む必要がありますし、属人化を避ける為、システム経験豊富な毎熊と、若手の平尾の二人に加わってもらいました。
現在は、fusion_placeのワークフロー機能を使い、予算策定・予実比較を、各店舗・各事業部にトライアル展開しているところです。
━ おひとりでの導入で困ったこと、大変だったことはありますか。
鶴田様 はじめは、fusion_placeの知識だけでなく、基幹システムのデータ内容もわかっていませんでしたので、それぞれの理解を並行して身につける必要がありました。
基幹システムから出力した元データとfusion_placeの多次元データベースのつながりを整理して、マニュアル、Q&Aなど公開されているコンテンツを利用しながら試行錯誤を繰り返すうちに、業務とfusion_placeの理解が両面で深まりました。
行き詰ったときは、サポート窓口にも質問しましたが、そのメールでのやりとりを通して、頭の中が整理されていくということも、よくありました。
理解が深まるにつれ、fusion_placeは、レゴブロックのように組み合わせることで何でも作ることができるなと、子供の頃、レゴが好きだったことを思い出しながら開発していました。
とはいえ、伴走無しで進めていたので、不安を抱えながらの開発でしたので、今回、fusion_placeの設定をフュージョンズ社に見てもらって、お墨付きをもらえたので安心しました(笑)。
━ 多種多様な事業を運営されていますが、fusion_placeでどのように管理していますか。
鶴田様 事業によって管理したいデータが異なるので、集約データを保持する「GL元帳」の他に、事業特性に合わせた明細を保持する「事業別補助元帳」を設けています。例えば、金融事業では、補助元帳で貸付金計画や貯金計画データを保持していますが、「増減明細」機能を使い、残高だけでなく、変動要因まで管理しています。
予算編成では、各店舗・各事業部が「コントリビュータ」(注1)のワークフロー機能を使った運用をトライアルしています。予算での提出データは、共通部分と各事業で固有部分があるのですが、fusion_placeのワークフロー機能は、提出ルートと提出データの組み合わせを指定できるので、各業種に必要な入力画面のみを提出対象とできて便利でした。
(注1)コントリビュータ:fusion_placeのデータ提出管理機能
━ その他、実現されている業務や機能はございますか。
鶴田様 配賦処理も実装しています。費用の階梯式配賦や、本店利益の支店への配賦等、費用・収益の配賦もしています。これは、fusion_place「フォーム」(注2)機能を使っています。
これまでは、Excelで対応していた配賦等のビジネスロジックや組織・事業・勘定科目といったマスター情報の管理をfusion_palceに集約できたのも導入してよかった点ですね。
毎熊様 人員計画は、Excel-Link(注3)で作成しています。社員やパートといった雇用形態による人件費の期ずれ計算をしたり、複数事業の従事者の人件費を各部門に振り分けたりといった複雑な調整が必要ですので、Excel機能を有効活用できるExcel-Linkで実現することにしました。
(注2)フォーム:fusion_placeの専用入出力画面
(注3)Excel-Link:fusion_placeとExcelのダイレクト双方向連携機能。
━ 各機能の特長を生かして実現されていますね。トライアル展開した結果はいかがでしたか。
鶴田様 予算入力画面作成にあたって、各支店のユーザーに便利になったと言ってもらいたかったので、入力の手間を省こうと、項目選択による自動入力機能を作ったのですが、直接金額を手入力した方が楽でわかりやすいという声もあり、見直しも考えている所です。
毎熊様 ワークフローも提出、承認の階層が深すぎたため運用が煩雑でした。まずはシンプルな階層にして提出状況とバージョン管理による効率化を目指そうと考えています。
鶴田様 入力項目が多いという意見もありました。今は財務科目ベースで管理しているので、現場の活動につながるような管理科目を考えて、現場の負担とならないよう入力項目は管理可能費のみに限定するなど検討したいです。職員の経営意識を醸成するためにも、必要ですね。
━ 今後製品として改善してほしい点について教えてください。
平尾様 fusion_placeの全支店展開にあたり、現場を周り、予算入力方法を説明・指導しました。
現場では他の業務も行いながらの入力作業となるため、セッション切れが生じるケースが多くあったのですが、ユーザーが再ログインの手順がわからず、とまどう場面がありました。現場のユーザーにfusion_palceをよりよく使ってもらうため、改善を検討いただければと思います。
貴重な現場からのご意見をありがとうございます。次バージョンでは、ログインUIおよび認証システムを改善しております。また、UIについて重視しており、今後も継続的に改善してまいります。
―今後の目標を教えて下さい。
鶴田様 担当者レベルでの目標ではありますが、fusion_placeの活用を3ステップで進めていこうと考えています。
Step1は、「財務部門の業務効率化」、つまり、私の業務が楽になることです。これは、効率化だけでなく、今までできていなかったことも含めて実現できました。例えば、実績損益表では、Excel-Linkで支店や事業部や配賦前後などのパラメータを切り替えながら即時に出力できるなど、色々な切り口であっという間に作成できることに、感動しています。また、担当する開示書類作成業務もExcel-Linkで即時に出力できるようになり、とても楽になりました。
Step2は、「各支店・事業部門の業務効率化」です。まさに、今、トライアルとして取り組んでいるところですが、現場にもメリットを感じてもらえるよう改善しながら、現場の活動と業績評価が可視化されるインフラ整備を目指します。
最後のstep3は、「インタラクティブな経営管理最適化」です。現在、支店長会議では、各支店長はその場ではじめて実績値を見ていますが、今後は、各自で事前にfusion_placeで確認・分析し、会議は次のアクションを本部と支店で検討する場にしていきたいですね。 また、PDCAサイクルを回し、期中でアクションの判断ができるよう、本年度の下半期から見込管理を実施する予定です。将来的には、キャッシュフローを把握して余剰資金の活用にも役立てたいと考えています。
その他、私が独自開発した経緯より、属人化の課題があります。fusion_placeは、マスター設定や計算の仕組みは、画面を見れば一目瞭然なので、アプリケーション構築の考え方を残しておきたいと考えていて、ADRドキュメント(注4)の作成も検討予定です。
また、人事異動も多いので、社内メンバで対応するだけでなく、BTOサービスの利用も検討したいと考えています。
(注4)ADR (Architectural Decision Record): アーキテクチャ上の設計判断を記録するドキュメント形式